厚生労働省は2026年8月5日、「毎月勤労統計調査2026(令和8)年6月分結果速報」を公表しました(厚生労働省 発表資料)。事業所規模5人以上の調査で、現金給与総額は調査産業計・就業形態計で前年同月比3.4%増、実質賃金指数も1.6%増と6か月連続のプラスでした。ところが日本標準産業分類の「宿泊業,飲食サービス業」だけで見ると、現金給与総額は0.9%増にとどまっています。結論:飲食店にとって、世の中全体の賃上げから一人取り残されつつある、という話です。
何が起きたか
厚生労働省が2026年8月5日に公表した「毎月勤労統計調査2026年6月分結果速報」(事業所規模5人以上)によると、調査産業計・就業形態計の現金給与総額は531,677円で前年同月比3.4%増。うちきまって支給する給与は299,232円(3.4%増)、所定内給与は279,189円(3.4%増)、特別に支払われた給与(賞与等)は232,445円(3.5%増)でした。実質賃金指数は144.1で1.6%増、6か月連続のプラスです(消費者物価指数は持家の帰属家賃を除く総合で前年同月比1.9%上昇)。就業形態別では、一般労働者の現金給与総額が715,604円(3.6%増)、パートタイム労働者は129,042円(3.5%増)、パートの時間当たり所定内給与は1,444円(4.3%増)でした。一方、「宿泊業,飲食サービス業」に限ると、就業形態計の現金給与総額は158,585円で0.9%増、所定外給与は7,190円で0.5%減、特別に支払われた給与は25,453円で3.5%減という結果です。
なぜ重要か
158,585円という数字だけを見ると「飲食業界の月給は15万円台」と誤読しそうになりますが、それは正しい読み方ではありません。この数字は正社員だけでなくパート・アルバイトを含む常用労働者全体の平均であり、宿泊業・飲食サービス業は他産業よりパート比率が高いため、水準そのものが低く出る構造になっています。だからこの統計を経営判断に使うなら、水準ではなく「伸び率」を他産業と比べるのが正しい読み方です。そしてその伸び率で見ても、全産業3.4%増に対し飲食サービス業等は0.9%増にとどまります。フルタイム相当の一般労働者だけで比べても、全産業715,604円・3.6%増に対し、飲食サービス業等は429,037円・0.2%増(所定内給与291,958円・0.6%増、特別に支払われた給与113,715円・0.7%減)。正社員に絞ってもなお、他産業の賃上げペースから外れています。
比較対象を見るとその差はさらに際立ちます。同じ就業形態計の現金給与総額の前年比で、金融業,保険業は11.6%増、学術研究等は11.7%増、生活関連サービス等は9.4%増、医療,福祉は5.8%増。卸売業,小売業でさえ0.4%減ですが、それでも飲食サービス業等の0.9%増より下がり幅は小さい水準です。つまり飲食は「賃上げが遅れている」というより、賞与にあたる特別に支払われた給与が3.5%減るという、他産業と逆方向の動きを見せているということです。
一方でパートタイム労働者の時間当たり所定内給与は全産業平均で1,444円・4.3%増と、雇う側のコストは上がり続けています。賃上げの原資は結局、客単価からしか出てきません。値引きせずに単価を上げる現実的な道の一つが、料理の価値を訪日客にきちんと伝えて選んでもらうことです。人手不足の中で説明を尽くせないままでは単価も上げられず、賃上げの原資も作れないという悪循環に入ります。※速報値であり、確報段階で改訂される可能性がある点には留意が必要です。
飲食店は何をすべきか
①説明の型を紙とメニューに落とす
料理の説明・アレルゲン・値上げの理由など、伝えるべき内容をその場の即興に任せると、対応する店員によって質がばらつきます。あらかじめ紙かメニューの形に固定しておけば、誰が対応しても同じ説明ができます。
②値上げの根拠を書けるようにする
仕入れ値の上昇分を品目単位で把握し、「例えば」と明示したうえで単純な算数として示せる状態にしておきます。賞与にあたる特別に支払われた給与が減っている今、値上げの説明を後回しにする余裕はありません。
③外国語での説明を人の即興に依存させない
スタッフの語学力に頼った場当たり的な説明は、人の入れ替わりで簡単に途切れます。同じ内容を誰でも同じ形で出せる状態にしておくことが、賃上げ原資となる客単価を守る土台になります。
(a) 訪日客の1人当たり旅行支出は24.4万円、+3.3%
観光庁が2026年7月15日公表の「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)」によると、訪日外国人旅行消費額は2兆5,096億円(前年同期比+0.2%)、1人当たり旅行支出は24.4万円(+3.3%)。消費額上位5か国・地域は米国・台湾・中国・韓国・香港でした。so what:賃上げ原資の出どころとして、単価は伸びているということです。(観光庁)
(b) 農水省の海外展開・インバウンド拡大チーム募集、締切が近い
農林水産省が2026年7月31日、食文化の海外展開・インバウンド拡大に取り組む外食事業者等の募集を公表。海外展開チームの応募期間は2026年8月3日〜8月21日、インバウンド拡大チーム第1期は8月3日〜9月11日、第2期は9月24日〜10月30日です。so what:直近の締切は8月21日で、応募を検討するなら準備を急ぐ必要があります(詳細はこちらの記事)。(農林水産省)
(c) 食品表示基準の改正が消費者委員会に諮問
消費者庁が2026年7月17日、「食品表示法に基づく食品表示基準の一部改正に係る消費者委員会への諮問について」を公表。栄養機能食品制度について栄養成分の下限値・上限値、機能の文言、摂取上の注意事項の改正が諮問されています。so what:直接の対象は包装食品ですが、表示ルールは動き続けているので、自店の表示根拠も更新できる形で持っておく必要があります。(消費者庁)
参考: 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年6月分結果速報」(2026年8月5日)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606p/2606p.html
参考: 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年6月分結果速報(概要)」(2026年8月5日)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606p/dl/pdf2606p.pdf
参考: 観光庁「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)の結果について」(2026年7月15日)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00094.html

