ジャパンチケットホールディングス(ebica/Japan ticket運営)は2026年1月27日、訪日客数上位15都道府県の飲食店経営者・店長516名を対象にした「インバウンド外食市場に関する実態調査」(2026年1月6〜13日実施)の結果を発表しましたジャパンチケットHD プレスリリース)。結論:約2兆円のインバウンド外食市場の7割超を、多くの飲食店が取りこぼしている。分かれ目は「特別な設備」ではなく、旅行前に見つけてもらう導線と、来店後に言葉が通じる準備という話です。

何が起きたか

2025年の訪日客数は4,270万人で過去最高を更新し、それに伴いインバウンド外食市場の規模は約2.07兆円まで拡大しています。これだけ聞くと「飲食店にとって追い風」と感じますが、同調査で「インバウンド需要を十分に取り込めている」「ある程度取り込めている」と回答した店は合計25.4%にとどまりました。裏を返せば、約7割の店が「取り込めていない」と自己評価しているということです。

一方で、成果に差をつけている要因も見えています。旅行前(旅マエ)の段階で予約を受け付けている店ほど成果を出しており、旅マエ予約を実施している店の66.3%が「売上向上に貢献している」と回答しました(出典:ジャパンチケットHD 2026年1月27日発表)。市場は伸びているのに、大多数の店には届いていない——この構造こそが今回の発表の核心です。

なぜ重要か

「取りこぼし」の正体は、実は1つではなく2つの層に分かれています。それぞれ別の対策が必要な話です。

第一の層は「旅マエ」——旅行者は日本に着く前にスマホで店を決めているということです。旅マエとは、出発前にスマホやOTA(Online Travel Agent、Booking.comやTripadvisorのような旅行予約・口コミサイトの総称)で行き先や店を調べる段階を指します。この段階で情報が見つからない店、予約ができない店は、そもそも旅行者の検討リストに入りません。旅マエ予約実施店の66.3%が売上向上を実感しているという数字は、「店を選ぶ勝負は来店前に決着している」ことの裏付けといえます。

第二の層は「来店後」——運よく来店できても、言葉が壁になって単価が伸びないということです。日本語だけのメニューと口頭説明では、旅行者は無難な一皿を選んで終わりがちで、単価の高い品や追加注文にはつながりにくくなります。今回の調査で「成果を出している店」が挙げた取り組みの上位は、写真・ビジュアルの充実(37.4%)、多言語Webサイト(28.0%)、海外決済対応(24.3%)でした。写真・ビジュアルと多言語Webサイトは旅マエの「見つけてもらう・検討してもらう」段階に効き、海外決済対応は来店後の「支払いで躓かせない」段階に効きます。つまり成果を出している店は、旅マエと来店後の両方の層に手を打っているということです。多言語対応はもはや「あれば嬉しい」設備ではなく、「無いと検討にすら入らない」段階に来ている、というのがこの数字から読み取れる論旨です。

施策 実施率
写真・ビジュアル充実37.4%
多言語Webサイト28.0%
海外決済対応24.3%

出典:ジャパンチケットHD「インバウンド外食市場に関する実態調査」(2026年1月27日発表)より、成果を出している店が回答した上位3施策を抜粋。

飲食店は何をすべきか

数字が示す構造を踏まえると、飲食店が今できることは大きく3つです。

①旅マエに「見つかる」状態を作る
Googleマップの自店情報や写真を最新の状態に保つことは、費用をかけずにできる旅マエ対策です。旅行者は出発前にスマホで検討材料を集めているので、情報が古い・写真が少ないというだけで検討の対象から外れてしまいます。

②メニューを、お客様が自分のスマホで自分の言語で読める導線を用意する
卓上のQRコードから多言語ページに飛ばす「QRコードメニュー」の考え方は、特別なシステムを新規導入しなくても始めやすい手段です。スタッフが都度説明しなくても、お客様自身が知りたい情報にたどり着ける導線があるかどうかが、来店後の体験を左右します。

③来店後に効く「説明」を1品ずつ用意する
食材・調理法・辛さやアレルゲンの一言があるだけで、お客様は安心して一歩踏み込んだ注文ができます。一人当たりの消費単価が上がっている今だからこそ、この一言の有無が、無難な一皿で終わるか、もう一品につながるかの分かれ目になります。

その他の注目ニュース

(a) 6月の訪日外客数は3カ月連続の前年割れ、ただし15市場は過去最多
JNTOの発表では、6月の訪日外客数は314万8,600人(前年同月比6.8%減)。ただし韓国・台湾・米国など15市場は6月として過去最多を更新しました。「訪日客が減った」の一言で萎縮せず、自店に来る客層(伸びている市場)の言語対応で判断したいところです。(出典:JNTO 2026年7月15日)

(b) 国内客もAIで店を「知る」時代に
COLLINS株式会社の調査では、ChatGPTなどAIで飲食店を「知る」人が10%を超え、AIの提案から実際に来店する転換率は他のSNS経由を上回る水準でした。国内客ですらAIで店を選び始めており、店の情報が機械可読に整っているかが問われ始めています。(出典:COLLINS株式会社 2026年2月24日)

参考

参考: 株式会社ジャパンチケットホールディングス「インバウンド外食市場に関する実態調査」(2026年1月27日)
https://www.japanticket.com/news/press/survey-on-the-inbound-dining-out-market2026_japanticket/

参考: 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年6月推計値)」(2026年7月15日)
https://www.jnto.go.jp/news/press/20260715_monthly.html

参考: COLLINS株式会社「飲食店の選び方に関する調査」(2026年2月24日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000135874.html