結論から言うと、訪日外国人旅行者がスタッフとのコミュニケーションで困った場所のうち、最も割合が高いのは「飲食店」で38%です。多言語表示・クレジット/デビットカード利用の困りごとでも同様に飲食店が最上位で、飲食店は訪日客の困りごとが構造的に集中しやすい現場だと言えます(観光庁「令和7年度『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』調査結果」令和8年4月)。この記事でわかること: ①「飲食店38%」「訪日客全体の15.4%」「約5.9%」という一見矛盾する数字が同じ調査のどの母数から出ているか ②令和6年度と令和7年度で何が比較でき、何が比較できないか ③困った訪日客が実際にどう行動し、どれくらいが「諦めて」いるかです。
1. 飲食店の多言語対応とは——訪日客の困りごとが集中する場所
「多言語対応」というと、まず言語の数を増やす話だと思われがちです。しかし観光庁が令和8年4月に公表した「令和7年度『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』調査結果」(対面式アンケート、成田・羽田・関西・福岡・新千歳の5空港、令和7年11月18日〜令和8年1月13日実施、有効回収n=4,110)を見ると、飲食店は多言語対応の一部だけを直せば済む場所ではないことがわかります。旅行中に困ったこと全体の1位は「ごみ箱の少なさ」17.2%、2位は「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」15.4%で、以下上位7項目は2.の表にまとめました。「困ったことはなかった」は43.7%でした。
この全体順位だけを見ると「ごみ箱」が最上位で、飲食店固有の課題は目立ちません。ところが「どこで困ったか」を場所別に見ると様相が変わります。コミュニケーションで困った人への設問では飲食店が38%で最多、多言語表示に困った人への設問でも飲食店は24%で「鉄道駅構内」と並んで最多、カード利用で困った人への設問でも飲食店は32%で最多でした。3つの異なる困りごとのすべてで飲食店が最上位に来るのは、偶然の重なりではなく構造的な集中だと言えます。
実際の順位は次の通りです。スタッフとのコミュニケーションで困った人(n=634)に「どこで困ったか」を複数選択で尋ねた結果です。
| 困った場所 | 全回答者 | 都市部のみ | 地方部のみ |
|---|---|---|---|
| 飲食店 | 38% | 36% | 36% |
| 鉄道駅・バス乗り場 | 27% | 27% | 23% |
| その他小売店 | 22% | 24% | 18% |
| 百貨店・SC | 20% | 26% | 16% |
| 交通機関の車内 | 20% | 22% | 19% |
| 観光地・案内所 | 18% | 18% | 15% |
| 観光地へ向かう道中 | 14% | 13% | 13% |
| 宿泊施設 | 9% | 10% | 14% |
| 公共施設 | 5% | 5% | 5% |
| 空港・港湾 | 5% | 6% | 6% |
出典:観光庁 令和7年度調査。母数はコミュニケーションに困った人n=634(都市部のみ訪問n=212、地方部のみ訪問n=140)、複数選択。調査票の表記は「鉄道駅、バスターミナル」「観光スポット、観光案内所」で、表では短縮した。「その他小売店」はドラッグストア・コンビニ・土産物店・量販店等、「百貨店・SC」は百貨店・ショッピングセンター、「交通機関の車内」は鉄道・地下鉄・バス・タクシー等の車内、「公共施設」は公共トイレ・医療機関等を指す。「その他」3%は省略。
都市部だけを回った人でも地方部だけを回った人でも飲食店が36%で1位です。旅行先の性質に関係なく、飲食店が最初に言葉の壁にぶつかる場所になっています。
背景には市場規模もあります。観光庁「インバウンド消費動向調査 2026年4-6月期(1次速報)」(2026年7月15日発表)によれば、2026年4-6月期の訪日外国人旅行消費額は2兆5,096億円(前年同期比+0.2%)、このうち飲食費は21.7%・5,454億円を占め、一人当たりの飲食費は53,143円です。四半期5,000億円超が動く市場が、同時に困りごとが最も集中する場所でもある、というのがこの記事の出発点です。
2. 「飲食店38%」と「15.4%」——同じ調査で数字がズレる理由は母数
ここまでで「飲食店38%」と「コミュニケーションで困った人は15.4%」の両方が出てきました。38%の方が大きいのは矛盾ではなく、同じ調査の中で母数(分母)が違う数字を並べているだけです。順を追って計算してみます。まず訪日客全体n=4,110人のうち、スタッフとのコミュニケーションで困ったと答えた人がn=634人(4,110人の15.4%、634÷4,110=15.42%で一致します)。この634人に「どこで困ったか」を複数選択で尋ねたところ、飲食店を挙げた人が38%でした。634人×38%で計算すると約241人になります。この241人を訪日客全体4,110人で割ると約5.9%です。つまり「飲食店38%」「訪日客全体の15.4%」「訪日客全体の約5.9%」は、すべて同じ調査の中で、分母を変えて切り出した数字ということになります。例えば「訪日客のうち飲食店でスタッフとの会話に困った人はどれくらいか」と聞かれれば約5.9%が答えになり、「コミュニケーションで困った人のうちどこで困った人が多いか」と聞かれれば飲食店38%が答えになります。どちらも間違いではなく、聞かれている問いが違うだけです。
下の表は、旅行中に困ったこと全体の上位7項目です。「困った場所」ではなく「困った内容」の順位であることに注意してください。
| 順位 | 困った内容 | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | ごみ箱の少なさ | 17.2% |
| 2 | スタッフとのコミュニケーション | 15.4% |
| 3 | 観光地・地域の混雑 | 12.9% |
| 4 | 交通機関の利用 | 11.3% |
| 5 | 多言語表示の少なさ・わかりにくさ | 10.9% |
| 6 | カード利用 | 10.7% |
| 7 | 入国手続き | 10.3% |
出典:観光庁 令和7年度調査(n=4,110、複数選択)。「困ったことはなかった」は43.7%。カード利用の正式名称は「クレジット/デビットカードの利用」。
3. 令和6年度と令和7年度、何が比較できて何が比較できないか
「去年より改善したのか、悪化したのか」を知りたくなるところですが、ここは慎重に扱う必要があります。観光庁の調査結果PDF本文は、令和6年度から令和7年度にかけて「2位から5位の『施設等のスタッフとのコミュニケーション』『観光地や地域の混雑』『交通機関の利用』『多言語表示の少なさ・わかりにくさ』はいずれも概ね横ばい」と記述しています。実際に確実に比較できる項目を並べると次の表の通りです。
| 項目 | R6 | R7 |
|---|---|---|
| 困ったことはなかった | 51.1% | 43.7% |
| ごみ箱の少なさ | 21.9% | 17.2% |
| スタッフとのコミュニケーション | 15.2% | 15.4% |
| 観光地・地域の混雑 | 13.1% | 12.9% |
| 入国手続き | 8.6% | 10.3% |
出典:観光庁 令和6年度調査(n=4,189)・令和7年度調査(n=4,110)。4か年比較の母数は令和元年度n=4,006・令和5年度n=4,012・令和6年度n=4,189・令和7年度n=4,110(令和2〜4年度は未実施)。交通機関・多言語表示・カード利用のR6数値はグラフが未確定のためここには載せていない。
「困ったことはなかった」は51.1%から43.7%へと7.4ポイント下がっている一方、「スタッフとのコミュニケーション」は15.2%から15.4%とほぼ横ばいです。ここから言えるのは、コミュニケーションという項目単体が急激に悪化したわけではなく、他の項目を含めた全体として、何かしら困った人の割合が増えたということです。「コミュニケーションが去年より深刻になった」という書き方はこの数字からは導けません。
もっと注意が必要なのが、「困った結果どう対応したか」という設問です。令和6年度はこの設問の母数を「困った"場所"が都市部/地方部」で切っています(都市部で困った人n=411、地方部で困った人n=326)。ところが令和7年度は同じ設問の母数を「"都市部のみ"を訪問した人/"地方部のみ"を訪問した人」という訪問パターンで切っています(都市部のみ訪問n=212、地方部のみ訪問n=140)。母数の定義そのものが年度によって変わっているのです。仮に令和6年度と令和7年度で同じ設問名の数字が上下していても、「◯%から◯%に減った」とは書けません。切り取り方が違う集団を比べているからです。飲食店の割合も同様で、令和6年度の都市部で困った人(n=411)のうち飲食店を挙げたのは54%、地方部(n=326)は49%でしたが、令和7年度の「飲食店38%」(n=634、都市部のみ訪問n=212では36%)と単純に並べて「約50%から38%に改善した」とは言えません。この記事で確実に比較できるのは、上の表にある全体値だけです。
年度をまたいで数字を比べるときは、必ず母数(n)の定義を確認する必要があります。同じ設問名でも、母数の切り方が変われば数字の意味が変わり、単純な引き算や増減の議論は成立しません。観光庁の調査に限らず、複数年の統計を扱う際に押さえておきたい基本です。
4. 翻訳アプリが68%を救い、31%は黙って去る
スタッフとのコミュニケーションで困った人(n=634)が実際にどう行動したかを見ると、飲食店にとって最も重い数字が見えてきます。最も多かったのは「スタッフ側又は旅行者自らが自動翻訳システムや翻訳アプリ等のICTツールを利用してコミュニケーションを行った」で68%。次いで「コミュニケーションができる別の対応者を要請し、コミュニケーションをとった」が14%です。そして「コミュニケーションを諦めた(自分で情報を調べる等行った)」が31%を占めます。観光庁の調査結果PDF本文も「一方で、『コミュニケーションを諦めた』人も3割程度存在する」と述べています。
翻訳アプリの普及によって68%は何らかの形で乗り切れている一方、約3人に1人はそのまま諦めているという計算になります。この「諦めた」客は、店にクレームを言うわけでも店員を呼び止めるわけでもなく、そのまま静かに帰る、あるいは注文を最小限にして早めに切り上げる、という行動を取りがちです。店側からすれば「特にトラブルはなかった」ように見えるため、クレームの有無だけで対応の良し悪しを判断するのは危ういということになります。
もう一つ見落とされやすいのが14%の「別の対応者を要請した」です。これは英語などを話せる別のスタッフを呼びに行ったということであり、その分だけ人の時間が使われています。人件費の観点からこの「説明にかかる時間」を扱った記事として、最低賃金の目安が全国平均1,176円に——飲食店で最初に効くのは「外国語で説明する時間」も合わせてご覧ください。
5. 「多言語対応した」のに困られる——困った内容の内訳67/24/20/9
多言語表示の少なさ・わかりにくさで困った人(n=446)に「何が困った内容か」を尋ねた設問は、飲食店の実務にとって最も具体的な示唆を与えてくれます。最多は「多言語対応されていない/表示言語数が不足している」67%ですが、「記載量が原文と比較して少ない」24%、「誤訳があった」20%、「固有名詞等の表記が統一されていない」9%と続きます。67%は文字通り「訳が無い」問題ですが、残りの24%・20%・9%は「訳したのに困られている」問題です。つまり多言語対応は、言語を増やすだけでは終わりません。
| 困った内容 | 全体 | 都市部のみ | 地方部のみ |
|---|---|---|---|
| 対応言語数の不足 | 67% | 63% | 70% |
| 記載量が原文より少ない | 24% | 22% | 22% |
| 誤訳があった | 20% | 24% | 14% |
| 固有名詞の表記不統一 | 9% | 8% | 13% |
| その他 | 5% | 3% | 4% |
出典:観光庁 令和7年度調査(母数=多言語表示に困った人 n=446、複数選択)。都市部のみ訪問n=166、地方部のみ訪問n=93。都市部のみでは「誤訳24%」が2位、「記載量22%」が3位で全体と順位が入れ替わる。
都市部のみ訪問した人(n=166)に限ると順位が変わり、「誤訳があった」24%が2位、「記載量が原文より少ない」22%が3位になります。都市部は表示そのものが地方より整備されている分、雑な訳や薄い訳が相対的に目立ちやすいと解釈できます。困った後の行動は「翻訳アプリ等のICTツールを利用して解読」57%が最多で、「周りのスタッフ・旅行客にコミュニケーションをとった」36%、「解読を諦めた」29%と続きます。多言語表示でわからないことがあると、4割近い人がスタッフに直接聞いており、表示の不備はそのままスタッフの対応負荷に跳ね返ります。逆にスタッフと話が通じなければ翻訳アプリに頼るため、多言語表示とスタッフ対応は切り離せません。
6. 現場で起きること——一次体験と、何から手をつけるか
私たち株式会社NGraphは、飲食店の多言語メニュー制作・運用に携わってきました。実際に公開許可を得ている店舗の一つが「蟹と海鮮ぼんた」です。この現場で繰り返し起きるのが、日本語メニューを機械翻訳にかけると、料理名は訳せても「何が入っているか」がそのまま消える、という現象です。原文が「本日の鮮魚」のように短いと、訳した後も情報量は変わりません。これは5.で見た「記載量が原文と比較して少ない24%」という困りごとと直結しています。訳の言語数を増やすことと、訳の中身を厚くすることは別の作業だというのが現場の実感です。
もう一つよく起きるのが、食材の対訳を店ごとに作り直すと表記がばらついていく、という問題です。例えば「ズワイガニ」を韓国語で音写すると通じにくく、標準的な語彙に寄せる必要があります。私たちはこの反省から、食材名の対訳辞書を店舗横断で共通化し、複数店舗で同じ語を使う運用に切り替えました。これは5.の「固有名詞等の表記が統一されていない9%」と同じ構造の問題で、個別の店で場当たり的に訳語を決めると表記ゆれが必ず発生します。
アレルゲン情報も、メニュー本体・多言語ページ・厨房掲示という3か所に分かれて存在するのが通常で、1か所だけ更新すると残りが古いままになり矛盾が生じます。更新は3か所同時でないと事故につながる、というのが現場での学びです。
費用のかけ方には大きく3つの選択肢があります。翻訳会社への外注は品質が安定する一方、メニュー改定のたびに追加費用と納期が発生しやすく、更新頻度が高い店舗ほどコスト構造が重くなります。自社で作る方法は初期の手間はかかるものの改定のたびの追加費用は発生しにくい代わりに、表記統一やアレルゲン整合の管理を自前で維持し続ける必要があります。機械翻訳をそのまま使う方法は最も手軽ですが、5.で見た「記載量が少ない」「誤訳」「表記不統一」が出やすく、チェック工程を挟まないと困りごとの再生産になりかねません。金額を断定はできませんが、「更新のたびにどれだけコストと手間がかかるか」を導入前に見積もっておく必要があります。
アレルゲン表示の考え方は食物アレルギー表示の記事で、ベジタリアン・ムスリム等の食の多様な対応はこちらの記事で詳しく扱っています。
7. やってしまいがちなNGパターン
- 「翻訳アプリがあるから大丈夫」と考える——68%は翻訳アプリ等で乗り切れていますが、31%は「コミュニケーションを諦めた」と回答しています。諦めた客は苦情を言わずに帰るため、店側からは問題として見えません。
- 「多言語対応=言語数を増やすこと」だと考える——困った内容の67%は言語数不足ですが、24%は「記載量が原文より少ない」、20%は「誤訳があった」でした。言語を増やしても記載内容が薄ければ困りごとは解消しません。
- 日本語メニューを短いまま機械翻訳する——原文が「本日の鮮魚」のように短いと、訳しても情報量は増えません。原文の情報量そのものを見直す必要があります。
- 料理名だけ訳して、食材・アレルゲン・食べ方を訳さない——料理名の翻訳は多言語対応の一部にすぎず、記載量の薄さとして困りごとに直結します。
- 固有名詞(店名・料理名)の表記をページごとに変える——多言語表示に困った人の9%が「固有名詞等の表記が統一されていない」を挙げています。店舗横断で表記を揃える運用が必要です。
- 表示の不備をスタッフの口頭対応だけで埋めようとする——多言語表示で困った人の36%が「周りのスタッフ・旅行客にコミュニケーションをとった」と回答しています。表示を整備しないままだと、その分がそのままスタッフの負荷に跳ね返ります。
- 多言語ページだけ直して日本語メニューと乖離させる——メニュー本体・多言語ページ・厨房掲示のいずれかだけを更新すると、残りが古いままになり矛盾が生じます。更新は複数箇所を同時に行う必要があります。
8. FAQ
Q. 「飲食店38%」と「訪日客全体の15.4%」、どちらが正しいのですか?
A. どちらも正しい数字ですが、母数が違います。38%は「スタッフとのコミュニケーションで困った人(n=634)」のうち飲食店を挙げた割合、15.4%は「訪日客全体(n=4,110)」のうちコミュニケーションで困った人の割合です。634人×38%で約241人、これを全体の4,110人で割ると約5.9%になり、これが「訪日客全体のうち飲食店でスタッフとの会話に困った人」の割合です。
Q. 令和6年度から令和7年度で、飲食店のコミュニケーション対応は改善したのですか?
A. 単純比較はできません。令和6年度は「困った場所が都市部/地方部」という定義の母数(都市部n=411・地方部n=326)、令和7年度は「都市部のみ訪問した人/地方部のみ訪問した人」という訪問パターンで切った母数(都市部のみn=212・地方部のみn=140)で、母数の定義そのものが変わっています。比較可能なのは全体の「困ったことはなかった」等ごく一部の項目に限られます。
Q. 困った訪日客はどう対応しているのですか?
A. スタッフとのコミュニケーションで困った人(n=634)のうち68%が翻訳アプリ等のICTツールを使い、14%が別の対応者を要請しました。一方で31%が「コミュニケーションを諦めた」と回答しています。諦めた客は苦情を言わずに帰るため、店側からは問題が見えにくいという特徴があります。
Q. 多言語メニューを用意すれば困りごとは解決しますか?
A. それだけでは解決しません。多言語表示に困った人(n=446)の内訳は「対応言語数が不足」67%が最多ですが、「記載量が原文と比較して少ない」24%、「誤訳があった」20%も一定数存在します。言語を増やしても、記載内容が薄い・誤訳がある状態では困りごとは解消しません。
Q. 訪日客はなぜ「困ったことはなかった」の割合が下がっているのですか?
A. 観光庁の調査では「困ったことはなかった」の割合が令和6年度51.1%から令和7年度43.7%に下がっています。一方で「施設等のスタッフとのコミュニケーション」は15.2%から15.4%とほぼ横ばいで、この項目だけで急激に悪化したわけではありません。他の項目を含めた全体として、何かしら困った人の割合が増えたと解釈するのが妥当です。
Q. 飲食店が優先して直すべき困りごとは何ですか?
A. 観光庁調査では、コミュニケーション・多言語表示・クレジット/デビットカード利用のいずれの困りごとでも「飲食店」が最も高い割合を占めています。特にコミュニケーション面では38%と突出しており、飲食店は訪日客の困りごとが構造的に集中しやすい現場だといえます。
9. まとめ
「飲食店38%」「訪日客全体の15.4%」「約5.9%」は、いずれも観光庁の同じ令和7年度調査から出た数字で、母数を追えば矛盾なく理解できます。飲食店は、コミュニケーション・多言語表示・カード利用のすべてで最も困りごとが集中する場所です。年度をまたいだ比較では、母数の定義自体が変わっているため単純な増減は語れません。確実に言えるのは「困ったことはなかった」が51.1%から43.7%へ下がった一方、コミュニケーション単体は15.2%から15.4%とほぼ横ばいだったという全体値だけです。
現場でできることは、翻訳アプリ任せにしないこと、言語数だけでなく記載内容の厚みと訳の正確さを見直すこと、固有名詞の表記を店舗横断で揃えること、メニュー本体・多言語ページ・厨房掲示を同時に更新することです。数字を見るときは「その割合は何を分母にしているか」を確認する習慣が、資料を正しく読み解く上で役立ちます。
参考: 観光庁「令和7年度『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』調査結果」(令和8年4月・報道発表2026年4月28日)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001998843.pdf
参考: 観光庁「令和6年度『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』調査結果」(報道発表2025年4月18日)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001882887.pdf
参考: 観光庁「インバウンド消費動向調査 2026年4-6月期(1次速報)」(2026年7月15日発表)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00094.html

