株式会社帝国データバンク(TDB)は2026年7月22日、「飲食店」の倒産動向(2026年上半期)を発表しましたTDBプレスリリース)。2026年上半期の飲食店倒産件数は473件で、前年同期の458件から15件・3.3%増え、過去最多を4年連続で更新しました。結論:飲食店にとって「値上げに踏み切れない店から潰れていく」局面に入った、という話です。

何が起きたか

TDBの発表によると、2026年上半期(1〜6月)の飲食店倒産件数は473件。前年同期(458件)からは15件・3.3%の増加で、過去最多を更新するのはこれで4年連続です。件数以上に目立つのが負債総額の伸びで、約245億9,200万円と前年同期比36.6%増加しました。

規模別に見ると、負債5,000万円未満の小規模倒産が369件で全体の78.0%を占め、倒産の主体はあくまで小さな店です。一方で負債10億円以上の大型倒産も3件発生しており、これが負債総額を押し上げました。業態別では①酒場・ビヤホール125件(前年同期比19.0%増、過去最多)②中華・東洋料理店91件(同3.4%増、過去最多)③日本料理店48件(同4.3%増)の順に多く、上位2業態は件数そのものが過去最多を更新しています。

業態 件数 前年同期比
①酒場・ビヤホール125件+19.0%(過去最多)
②中華・東洋料理店91件+3.4%(過去最多)
③日本料理店48件+4.3%

出典:株式会社帝国データバンク「飲食店」の倒産動向(2026年上半期)(2026年7月22日発表)より、業態別トップ3を抜粋。

なぜ重要か

TDBは今回の発表で、倒産増加の背景を「規模間格差」の拡大と分析しています。大手チェーン企業は店舗数の規模を活かしたコスト抑制と、原材料・人件費・光熱費の上昇分を価格に転嫁することで増収増益を確保できている一方、中小・零細の飲食店は価格転嫁に踏み切れず業況悪化が進んでいる、という構図です(出典:TDB 2026年7月22日発表)。

倒産の主体が負債5,000万円未満の小規模店(全体の78.0%)であることは、この「価格転嫁できない店」の構図をそのまま裏づけています。値上げに踏み切れない理由は店ごとに様々ですが、共通しているのは「客単価を上げられない」という一点です。

ここで手がかりになるのが、7/29公開の当ブログ記事で紹介したインバウンド客の消費動向です。ジャパンチケットHDの調査では、旅マエ(旅行前にスマホ等で店を検討する段階)予約を受け付けている店の66.3%が「売上向上に貢献している」と回答しており、訪日客の飲食単価は国内客より高い水準にあるとみられます(関連記事:インバウンド外食2兆円の取りこぼし)。つまり、客単価の高いインバウンド需要を取り込めている店ほど、値上げに頼らずとも収益を確保しやすい可能性があるということです。

逆に言えば、人手不足で外国語対応にスタッフの手を割けない中小・零細店ほど、客単価の高いインバウンド需要を取りこぼしながら、原材料・人件費の上昇分の価格転嫁もできない——という二重の圧迫を受けている可能性がある、というのが今回の倒産データから読み取れる示唆です。断定はできませんが、「規模間格差」が広がる一因として、こうした客単価面での機会損失も無視できない傾向として見えてきます。

もちろん、倒産の直接の引き金は資金繰りや後継者不在など店ごとに事情が異なり、単価だけで説明がつく話ではありません。それでも、コスト上昇という同じ逆風の中で明暗が分かれている以上、「値上げできるかどうか」を左右する客単価の構造には、目を向ける余地がありそうです。

飲食店は何をすべきか

倒産データが示す構図を踏まえると、中小・零細の飲食店が今できることは大きく2つです。

①値上げの是非を、客単価全体で考え直す
価格転嫁は「値上げして客が離れるかどうか」だけで判断されがちですが、客単価は品数・注文点数・客層構成でも変わります。値上げそのものをためらう前に、今の客単価をどう底上げできるかを洗い出す価値があります。

②取りこぼしている需要がないかを確認する
人手不足で外国語対応に手が回っていない場合、単価の高い客層を検討の入り口で逃している可能性があります。既存のオペレーションを変えずに始められる対応(メニューの多言語表示など)がないか、まず現状を確認するところから始められます。

その他の注目ニュース

(a) 免税制度、2026年11月から「リファンド方式」に変更
2026年11月から訪日外国人向け免税制度が、購入時に免税額を差し引く現行方式から、消費税込みで支払った後に還付を受ける「リファンド方式」に変わります。消耗品の特殊包装義務や購入上限50万円ルールも撤廃されます。飲食店自体は免税販売の対象外ですが、外国人客の会計・支払いの動線が変わるため、接客時に聞かれても慌てないよう仕組みを知っておく必要があります。(出典:観光経済新聞 2026年)

(b) DX推進人材「不足」85.5%——飲食に限らない構造課題
IPA(情報処理推進機構)が2026年7月16日発表したDX動向調査で、DX推進人材が「不足している」と回答した企業は85.5%に上りました。人材不足は飲食業に限らない業種横断の課題であり、限られた人手を接客の付加価値(説明・多言語対応など)に振り向けるための省力化ツール活用が前提になりつつあります。(出典:IPA 2026年7月16日)

参考

参考: 株式会社帝国データバンク「飲食店」の倒産動向(2026年上半期)(2026年7月22日)
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260722-insyokuten2026fh/

参考: 観光経済新聞「【インバウンド免税制度】2026年11月から払い戻し方式へ」
https://www.kankokeizai.com/【インバウンド免税制度】2026年11月から払い戻し方式へ/

参考: 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」(2026年7月16日)
https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2026/rcu1hd0000016yh4-att/press20260716.pdf